キュイジニエCuisinier

2015.12.27

連載、食いしん坊倶楽部 番外編② どんぐり農園

生まれた時から食いしん坊、YMです。

 

「どんぐり農園」
下田市大賀茂にある、80年続く家族経営の柑橘園。甘夏の栽培から始まり、二代目で多種多様な品種を導入、開発。現在三代目。約2haの園地では、50種類以上の品種を草生栽培し、有機肥料のみを使う自然栽培を行っており、10月を除き、年間を通して収穫されている。

 

10年以上も前になりますが、私がまだ東京のレストランで働いていた時のことです。料理人として駆け出しの頃で、食材の納品で検品や整理する役割が多かったのですが、毎日たくさんの食材が届くその中に、どんぐり農園の柑橘がありました。

当時も今と同じ、「おれんじ いず しもだ」と書かれた赤い箱で届いたのですが、初めてその箱を開けたときの感動は今も忘れられません。

 

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高層ビルが立ち並ぶ大都会、地下1階にあったキッチン裏の薄暗い倉庫でしたが、フタを開け、色鮮やかな球が見えた瞬間、みずみずしく爽やかないい香りが広がり、目を閉じると柑橘畑が脳裏に浮かびました。

その時からどんぐり農園の赤い箱が届くのが楽しみになり、回数を重ねるたびに、実際に農園に行ってみたいと言う気持ちが強くなっていきました。伊豆の下田に所在地があることしか知らなかった私は、仲介業者に頼み込んで、どんぐり農園さんにアポを取って頂きました。
今では産地に訪問することが、すっかり板に付いた感のある私も、このどんぐり農園訪問が、原点となったのは言うまでも無いことです。初めて訪れたこの時、農園にたどり着く前に山の切り通しを通って行ったことが、非常に印象に残っていました。

狭い道を抜けて行くと、日射しの明るい、山に囲まれた園がパッと広がったことを覚えています。

 

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お話を伺う中で、山の中腹にあり、東西に自然の防風丘を持ち、温暖な斜面であることが、オレンジにとってとても重要なポイントなのだということでした。
そして、試食させて頂いたオレンジ達は、甘いものはより甘く、酸っぱいものはしっかりと酸っぱく、それぞれが個性のある強い香りを持っていることに驚いたのです。今まで知っていたオレンジとは明らかに違うものでした‥‥

この数年後、偶然にもアルカナのオープニングスタッフとして東京から伊豆に移ってきた私は、どんぐり農園、そして伊豆という土地に強い縁を感じたのです。

 

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以来、幾度となくどんぐり農園を訪れている食いしん坊ですが、いつも面白いと思うのはオレンジそれぞれの食べごろについてです。
畑では5月上旬に一斉に花をつけるのですが、ほぼ1年間にわたって品種を変えつつ、それぞれの時期に収穫します。オレンジによって、結実してから比較的早く食べて美味しいものと、数ヶ月も枝にぶら下がった状態で、日照り、雨、潮風に耐え、やっと美味しくなるものと、色々あるのです。
毎回、ハサミを片手にオレンジ談義をしながら、園内を食べてまわり、これはまだ早いとか、ぼちぼち食べごろとか、いつ食べるの?今でしょ!などと本当に楽しい時間です。もちろんうまいです。

 

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時にはこのオレンジ何だっけ?ということもあり‥‥
というのは、「どんぐりオレンジ」などをはじめ、どんぐり農園オリジナルのオレンジも数多くあるからです。中には、商品化に至っていないものもたくさんあります。そんな時は、品種開発のプロ、お父さん(二代目)に聞かないと誰もわかりません。時には名前がついていなかったりもしますが、お父さんのセンスでつけられた名前のオレンジが幾つもあります。お孫さんが美味しいと言ったので、名前をとって「ひでぼう」にしたなど傑作でしょう!

いつも、ついつい長居をしてしまい、食べたいだけ食べて、さらには家にまで持ち帰る食いしん坊の私。どんぐり農園さんはいつもオレンジに名前のシールを付け、それぞれのプロフィールまでくださいます。今回はクレメンチン、清峰、グリーンポンカン、はるか、ひでぼう‥‥

 

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私はどんぐり農園のオレンジが大好きです。日本一うまいオレンジだと思います。これを料理に活かせるように精進していきたい。

 

柑橘に対する熱意と、謙虚で真摯などんぐり農園さんに敬意を表して。
いただきます。

 

 

食いしん坊YM

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