キュイジニエCuisinier
2016.10.9
連載 食いしん坊倶楽部 その14 キジ
「うまいもの
食すためなら
どこへでも」 食いしん坊YM
食いしん坊YMです。
今回は少し遠征になりますが、静岡県最西の浜松へ参上いたしました。
狙いを定めたのは、浜名湖の北に位置する、奥浜名湖と呼ばれる地域の静かな山里で育てられている”キジ”です。
キジは里の鳥と言われますが、その名も「きじの里」というところへ調査に行ってきました。静岡県内でもキジを育てているのはここ一軒だけだそうです。
きじの里は四方を森林に囲まれた豊かな自然の中にあり、年間雨量は比較的少なく、温暖、そしてとにかく空気の澄んだ場所。そういった環境が、キジをストレスなくのびのびと育てる最高の条件。
45年キジを育てているご主人に、早速お目当てのキジの様子を見せていただくことになりました。キジは大変神経質なので驚かせないように建物の外からそっとのぞきこみます。
広く清潔な舎内には、さすが日本の国鳥、気品すら感じさせるキジ達が本当に元気そうにしています。そして全く嫌な臭いがしません。床には抗菌作用のあるヒノキのおがくずと砂が敷かれています。天然飼料や、独自の発酵飼料を混ぜた、きじの里特製のエサを食べながら、特別に管理された環境でゆったりと育てられている様子を見ることができました。
ここでは4、5千羽が飼育されており、生後最低でも7ヶ月(200日)という長い時間をかけて、やっとありがたいお肉になるそうです。さらにお話を聞くところによると、キジは歳をとっても肉質が硬くならないばかりか、成熟してどんどん味わいが増していくそうです。したがって2年キジが良いとも言われ、特別に育てられているキジ達も見せていただくこともできました。
……うまいでしょうね、これは間違いなく。
素晴らしいことに、きじの里には和食処があり、2日前までの要予約にて、様々な料理法でキジを食べさせていただけるのです。今回はもちろん予約してきました。(実はこの前の週に予約を怠り、ありつけず、市内でキジ鍋と倶楽部お馴染みの釜めしだけを食べて帰るという経緯がありました……)
平安時代の文献にも献立として登場する、ニワトリよりも食肉文化の古いキジ。
あの徳川家康も好んで食べたというキジ。
良質なタンパク質と必須アミノ酸が豊富なキジ。
本日は溶岩焼きコースにて頂戴いたします!!
フランス料理ではジビエとして野性味の溢れるキジを食べますが、きじの里のキジは別物です。(もちろんそれぞれに良さがある上でのお話) ここのキジは、当然と言ったらそれまでですが、とにかく新鮮で、全くもってくさみやクセがありません。程良い肉の締まりと、非常に上品なうまさがあります。
そして特に感じたのは脂のうまさです。皮との間にしっかりと脂があるのですが、生の状態でも嫌みのない、口の中でスッと溶けるような融点の低さ。食べ進めても、くどさを感じないサッパリとした軽さ。
あー、うましっ。 (*´-`*)
寿司、湯引き、たたき、茶碗蒸し、燻製に溶岩焼き。〆の茶漬けに至るまで、どれもこれも本当にうまし。
ただ、今回ひとつ心残りがありました。それは、卵を食べられなかったことです。キジの産卵期は3月下旬から6月の3ヶ月間で、その時にしか味わえないのです。1羽から40個程度しか産まれないそうなので、貴重な卵ですね。聞くところによると、相当うまいらしい……( ´◡` )
食いしん坊ともあろうものが、そこまで聞いて未体験なのは、とてももどかしいところ…。来年は必ず卵も食しに戻ってきます。
ただ、数日経った今でも、きじ親子丼やきじ卵プリンの幻影が頭から離れてくれないのです。。。(*´ω`)
食いしん坊YM