連載:食いしん坊倶楽部

2021.1.30

食いしん坊倶楽部 No.29(希少!伊豆のなのり)

ひょっこり出ました。
皆様、ご無沙汰をしております。
食いしん坊YMです。

なぜひょっこり出たかと申しますと…
かねてより、皆さんにぜひご紹介しておきたいと思っていた、伊豆の隠れた特産品〈なのり〉の初物が今年もひょっこり世の中に現れたからであります。

菜の花の咲く頃に食されるので「菜海苔」とも書きますこの海藻ですが、冬の寒い時期のみ味わうことができる、素朴でしみじみうまい伊豆のローカルフードなんです。
毎年、年明け頃に姿を現すのですが、こいつが本当に気まぐれで…
その年の天候、特に風に大きく影響されてしまいます。
静岡県東部の沿岸、つまり駿河湾から西伊豆では1月から2月の頃、西風が強く吹く日が多くなりますが、その風と共に なのりは漂流し、伊豆の海岸へとたどりつきます。実に他力本願、風まかせなのです。
さらに、この なのりはこの冬の間に海岸に定着するだけで、春が近づくと消失してしまうという、逃げ足のはやさも一流です。
よって期間限定、厳しい寒さの中、磯や岩場にしがみついたところを、金具を持ったおじちゃんやおばちゃんが手作業でもって掻きとり、型にいれ、天日で乾燥し、製品にして限られた店頭に並ぶ事となります。

まったく、世話が焼けます。
風まかせで、品質や量、採取のタイミングも不安定ですから。
が故に、この食いしん坊は、今年も姿を見せたら逃すまいと目を光らせていたのです。そして先日、いつもの駅前スーパーでゲットした次第です。

この なのり、幻の海苔とまで称される程ですが、その理由について触れておかねばなりません。
実は、正式名称 カヤモノリ と申します。
太平洋、日本海に広く生息はするものの、採取する場所が極めて限られており、
食文化として根付いた地域が、全国的にも
非常に限定的な為、かなりレアものなのです。

なぜこんなにうまいのに!と思いますが、訳があるのでしょう。あえてここでは詮索しませんが、追い打ちをかけるように、時代が進むにつれて、なのりを食す地域も減少の一途をたどっているというので、一大事ですね。
なのり食文化を有する地域の中で、筆頭格である伊豆であってもそれは例外ではないようです。
昔から季節が訪れると、どの家庭でも食卓にのぼった なのり。正月の風物詩でもありました。諸先輩方に聞くと、懐かしい郷里の味だとか、ソウルフードだなどとおっしゃいます。
とりわけ沼津市内浦地区では大変親しみのある食材だったそうです。
しかし残念なことに、なのりは年々採取量が減り、希少さから高価なものとなり、近年では地元でも中々食べるチャンスがなくなってきたとの声も耳にします。
このまま徐々に忘れ去られていくのでしょうか?寂しさとこのままでいいのかという危機感すら感じます。

“食材の味わい”とは単においしい、まずいの 味 だけではありません。
食べるという行為を通して、
それは季節感であったり、記憶だったり、また発見だったりと、人のより主観的な部分でなにかを感受させてもくれるものです。
それら全てをひっくるめて、”うまい”の一言に表されるのでしょう。
結局のところ、食いしん坊は何が言いたいかというと…
なのりは、紛れもなく伊豆が誇る味わい深い食材のひとつだという事。そしてうまいに決まっていますって事。
私も伊豆在住10年にさしかかり、なのりの味わいがわかってきた気がします。
皆さんももし、運良くひょっこりと なのりを発見したならば、是非召し上がっていただきたい。そんな思いです。

ここで皆さんへ大切なことを補足しておきましょう。
端的に言うと なのりは香りの食材であります。よって風味が飛んでしまわないうちに食べる事に努めて下さい。
必ず製品になったばかりの新鮮なものかを確認し、ゲットした後は惜しみなく、できるだけ早くお召し上がりください。

色々な食べ方はあるとは思いますが、
この食いしん坊、
今宵は惜しみなく、王道の
with ホカホカご飯をご披露したいと思います。

まず初めにフライパンで軽くあぶり風味を引き出します。
鮮やかな緑色になり、チリチリと音がしたらOK

豪快にもみほぐし

On the ホカホカrice !

醤油は少なめに。
(鰹節を少し入れても良いでしょう)
湯気とともに上がる、なのり特有の磯の芳香。
程良い海の塩気と、十分に蓄えた旨味。

もちろんうまいに決まっており、
一膳で止まらないのは言うまでもありません。

なのり復興大臣
食いしん坊YM

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